武田徹著『調べる、伝える、魅せる』(中公新書 ラクレ 780円)より。あまりにも技術や技法で悩んでしまう場合には、次の一文。
<そんなことを考えて、筆者は文章にあまり気を遣って疲れてしますより、ぎりぎりまで追加取材する方法を選ぶこともある。取材は新しい事実を文章にもたらすだけでなく、少しだけかもしれないが、書き手の人生に経験の厚みを与えることもあるだろう。それが巡り巡って文章に反映するかもしれない。表現の方法論は、最後の最後に「どう書くか」よりも、「何を書くか」に戻ってゆく。どう書くかを教えようとする文章表現術が、いかに名文調を謳ってもどこか虚しいのは、百の文章論が迫真の一編のルポの前には色を失うという事実があってのことにほかならない。>