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2005年 06月 10日
「内田樹の研究室」の「2005年06月09日 声のいい男について」の中から、短編小説のような、いい話を書いてありました。勝手ですが、少々長めの引用をします。
この短編ですが、その光景が想像され、なにか映画のラストシーンを見ているような、そんな気にさせてくれました。こうした、いいショートストーリーをブログで読めれば、気分は上々ですね。 昔読んだビリー・ホリディの伝記『奇妙な果実』(いまにして思えば訳者は大橋巨泉だ)に印象的なエピソードが記してあった。 うろ覚えだけれど、こんな話。 ビリー・ホリディがロサンゼルスに仕事で来たことがあった。 ともだちの女性と二人で自動車で郊外にドライブに出かけた。 そしたら車がパンクしてしまった。 ふたりとも車の修理の仕方なんかぜんぜんわからないので、呆然として路肩に立ち止まって通り過ぎる車に合図を送るのだが、派手な服装をした若い黒人女ふたりのために停まってくれる車はなく(40年代のことで、黒人差別がいまからは想像できないくらいに厳しい時代のことだ)、ふたりは困惑しはてていた。 そこに洒落たスポーツカーが通りかかり、ドライバーはふたりを見ると停車して、すたすたと歩み寄り、「パンクしたの?」と訊いてきた。ふたりがうなずくと、手際よくスペアタイヤと交換して、「気をつけてドライブしなよ」と言って、ふわりと運転席に乗り込んで走り去って行った。 ビリー・ホリディが「いい男だなあ…」と後ろ姿を見惚れていたら、友だちの女の子がビリー・ホリディの手を抑えて、「ね、ビリー、今の誰だかわかってたの?」と訊ねた。 「誰?」 「クラーク・ゲイブルよ」 ※行挿入-店主
by h_osd
| 2005-06-10 00:03
| 単行本
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