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2004年 09月 20日
『戦争と平和』(吉本隆明著 文芸社)を読んで、作家と編集者の幸福/不幸な関係について考えさせられました。本題は別なのですが。
< 私の知っている大編集者と言うと、真っ先に浮かぶのは、寺田博氏である。寺田氏は河出書房育ちで、長いこと〝文芸〟の編集長をやったが、河出の社長が清水勝氏に交代した途端、河出を退社した。 私が感心するのは、河出を退めたあとでも、〝文芸〟連載中だった、井伏鱒二、吉本隆明、古井由吉三氏の作品の稿料を毎月、自分のポケットマネーで支払っていたことである。彼が半年後、作品社に移るまで、それは続いた。 「寺田は一流の編集者よ」 ことあるごとに、吉本は寺田氏をほめたたえていた。 その後、寺田氏は福武書店に移り、〝海燕〟を創刊し、編集長をつとめると、取締役になった。吉本は引き続き、〝海燕〟に寺田氏の要望で、「マス・イメージ論」を連載した。寺田氏はある時、私に語った。 「僕のいちばん尊敬しているのは、吉本さんですよ。学生時代からね。」> 「吉本隆明の日常-川端要寿」p125-126 このあと、〝批評空間〟を福武書店で出すことになり、寺田さんが吉本さんに執筆をお願いしたところ、吉本さんの批判者になった柄谷行人さんの雑誌には書かないと、頑強に言い張ったため、寺田さんとは疎遠になります。 その後、〝川上要壽を励ます会〟が神楽坂の出版クラブで行われたのは、平成八年七月一三日。閉会後、吉本さんと寺田さんが4年ぶりになんとなく握手をし和解しました。 このように、作家と編集者の関係はすばらしいものでもありますが、考え方の違いから、突然に離縁することもあります。寺田さんを高く評価していた吉本さんですから、復縁した時は本人のみならず寺田さんも川端さんも本当にほっとしたことでしょう。 作家と編集者の関係のなかにも、「事実は小説より奇なり」のドラマがあります。
by h_osd
| 2004-09-20 22:53
| 単行本
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