「
水谷哲也 読書日記」で、小さな本屋=出版社を取り上げています。前に取り上げていたボン書店、最新の文圃堂(ぶんぽどう)。
特に文圃堂は宮沢賢治の全集や中原中也の詩集を出した出版社です。
宮沢賢治の全集を出すために、草野心平さんが文圃堂の店主野々上慶一を口説き、出版しました。そのときの編集にはなんと高村光太郎、宮沢清六、横光利一、草野心平が加わっていました。宮沢清六さんは宮沢賢治の実弟です。宮沢側から、賢治の全集の編集に加わったのでしょう。
また文圃堂は小林秀雄さんの紹介で、中原中也の詩集『山羊の歌』を200部出版しました。野々上さんと小林さんとは親しく、その関係は50年余りも続いたそうです。当然、野々上さんとの交流に小林さんに関係する林房雄、吉田健一、永井龍男ら、「文士」の人たちが関わってきます。
<酒があり、
友がいて、
真情あふれる
この人が
いた。>
とは『思い出の小林秀雄』の帯の一文です。
詳しくは野々上慶一の著作については小林秀雄日記の「
野々上慶一」をご覧下さい。
草野さんが野々上さんを口説かなければ、詩人宮沢賢治は生まれなかったかもしれません。小林さんが野々上さんに中原中也を紹介しなければ、詩人中原中也は生まれなかったかもしれません。きっかけは偶然/必然?
本当に人の出会いと繋がりは不思議ですね。偶然が必然であったり、必然が偶然であったり。やはり、「縁」ですか。人と人との縁、その時代との縁。
水谷さんも書いていますが、「小さな、小さな本屋」でも大きな仕事をするものだと感心しています。