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2006年 09月 08日
小池民男さんが今年4月25日ガンのため亡くなりました。『時の墓碑銘』は「朝日新聞のコラムニストの絶筆のエッセイ集」です。
小池さんは今を見る確かな眼と広く深い知識をもって、あの「素粒子」、「天声人語」などを担当してきました。まさに名コラムニストになるような王道を歩いてきました。 昨年からは編集委員兼論説委員を兼務し、朝日新聞にエッセイを書いていました。そのエッセイを読んで、わかりやすく文章、適切な引用、鋭い批評にいつも感心していました。 いくつもの付箋が付いている中から、例えば「この小さなノートを残さねばならない 渡辺一夫」 。 ここには渡辺一夫さんの1945年3月1日からの日記のことが書いてあります。この日記の大半がフランス語で綴られていたというからすごい。そして小池さんは書いています。 <敗戦前後について書き記した日記は少なくないが、渡辺のそれは、いわば全身全霊をかけて時代状況に立ち向かった「魂の手記」とでもいうべき切迫感がある。たとえば次の一説。 「この小さなノートを残さねばならない。あらゆる日本人に読んでもらわねばならない。この国と人間を愛し、この国のありかたを恥じる一人の若い男が、この危機にあってどんな気持で生きたかが、これを読めばわかるからだ」>p57-58 これも迫力の一文です。さらに、こう結びます。 <国家というビヒモス(怪物)が強権をむきだしにして国民を追い立てた時代に、一人の人間の立場から異議を唱えた人たちがいたことを思い返す。>p58 たかが3ページのエッセイですが、されどなのです。こうした内容のエッセイが続きます。秋の虫の声を聞きながら、ゆっくりとじっくりと読みたいものです。 この本、「幾時代かがありまして 茶色い戦争がありました 中原中也」から「権力は腐敗する 弱さもまた腐敗する ホッファー」まで、46の「忘れられない一言がここにはある」(帯より) これを書き、ポストし、ブログを読んでいますと、巌谷大四さんが90歳、老衰で亡くなったという記事がありました。心よりご冥福をお祈り致します。 ▼四谷書房のサイトはhttp://yotsuya-shobo.com/ こちらから。
by h_osd
| 2006-09-08 00:08
| 単行本
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