埼玉県越谷市立図書館に「野口冨士男文庫」があること、知りませんでした。これを知ったのは3月26日の日経新聞「読書」の中の「文壇往来」です。
元々野口さんは東京生まれですが、奥さんが埼玉県の越谷市出身。そこに疎開していたこともあり、越谷市立図書館に「野口冨士男文庫」が開設されました。同名の小冊子現在8号が刊行されています。
その小冊子はいままでの野口さんの足跡を追い、作家として、編集者としての野口さん自身を紹介しています。
例えば、紀伊国屋書店の田辺茂一さんがスポンサーとなり、60年から15年間刊行された「風景」というリトルマガジンがあります。この雑誌の編集にもかかわりました。
元「新潮」編集長の坂本忠雄さんはその時のことを次のように語っています。
<リトルマガジンで成功したのは『風景』が唯一。野口さんは作家ですけれど、本当にプロの編集者だなということがよくわかる。>
そして、最後に編集委員の浦田憲治さんは、野口さんの未刊の日記について触れ、次のように書いています。
<昭和文壇史の貴重な資料でもある日記が、いずれの日にか出版できるよう望みたい。>
特に永井荷風や徳田秋聲について造詣の深い野口さんです。どのように日記を書いていたか、またその内容はどうだったのか、知りたいと思います。野口さんの日記を出版してくれる出版社はないのでしょうか。