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2005年 11月 16日
安藤鶴夫『新版 百花園にて』(三月書房)。新版は1999年01月に刊行されていますが、初版は1967年01月に出版されています。
この本を読みました。じみじみと深く感じ入る、ゆったりとした筆の運びは安藤鶴夫流なのでしょうか。そして最後にはほっとした余韻が残るのは私だけでしょうか。 例えば、こんな風に「感動」について語れることが、私にとっての「感動」なのです。 <本を読むことだって、音楽をきくことだって、なにか、たべることだって、旅をすることだって、なんだって、とどのつまりは、生きているということは、結局、感動をさがしていることじゃないか、と気がついたのも、ちょうど、五十面をさげたころである。 ただ、そんなこと、いい年ォして、はずかしくって、いえなかった。それが、このごろ、そんなにもはずかしがらずに、いえるようになったのである。 なったら、そのころから、感動することが少なくなった。なくなったといってもいい。>p67-68 感動って、そんなものかな。そんなものなんだろうな。わからないほど感動し、わかってくるほど感動が少なり、終いにはなくなるという。 また、こんな話。 <旅をして、どこもかしこも東京とおなじようなビルばかりの街になったら、わたしはもう旅をしなくなるだろう。東京には東京の、大阪には大阪の、それぞれの誇りをもった芸や、たべものや、けしきや、風俗があってこその、生活の喜びであるまいか。そうあってこそ、わたしは、子孫に恥じることのない、ほんとうの文化生活だと思っている。>p247-248 そうであっても、時代は逆に、どこもかしこも東京と同じ街になりつつあります。価値の多様化という、画一化が進行している中で、「ほんとうの文化生活」は自壊し、階層化が拡大し、「生活の喜び」は霧散しています。 安鶴さんが生きていたら、今の現状について聞いてみたい気がします。おもしれぃじゃねぇか、というのか、もうおわりだね、というのか、はたまた、だまってしまうのか。
by h_osd
| 2005-11-16 07:24
| 単行本
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