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2005年 06月 12日
福岡賢正『隠された風景-死の現場を歩く』(南方新社)。これは最近読んだ本のなかで、おすすめというより、読んでもらいたい本の一冊です。
この本は死という現場がどれだけ隠されているかをわれわれに知らせてくれます。われわれはいろいろな死があることを知らないばかりか、われわれもあえてそれを知ろうとしないことも知ることになります。 そう、死というものから目をそむけている。いやなものは見ない、臭いものにはふたを。果たしてこれでいいのか。 著者はいいます。 <現代に生きる人々、わけても今の子供たちや若者たちが、「生」や「いのち」を実感できないでいるのは、実は「死」が我々の身の周りから巧妙に隠され、遠ざけられているからではないか。そうであるなら、その隠された「死」の現場を訪ねて、そこにひろがっている風景を克明に描写し、人々の目の前に突きつけることこそが、今、切実に求められているのではないか。>p224-225 そこから取材が始まり、「ペットの行方」「肉をつくる」「遺書を読む」の三部が完成します。 「ペットの行方」ではペットブームの行き着く先を、捨てられたペットたちの処分=死をどう考えるのか。「肉をつくる」の食鳥処理場の、また牛や豚の屠畜場の現実はどうなのか。「遺書を読む」では動物ではなく、人間の死は今どうなっているのか。死というより自殺。そしてこれからの高齢化社会での老いと死。これらの問題は決して避けてとおることができません。 だから、この本に書き込まれている確かな死を、しっかりと見なければなりません。ふたを取り、目をつむるのではなく、目を開けて。 筆者はいいます。 <「死」から目を逸らさず、きちんと正面から見据えることで初めて「いのち」の輝きは見えてくる。>p327 私も筆者のこの言葉に共感します。
by h_osd
| 2005-06-12 00:18
| 単行本
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