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2005年 05月 16日
『都市空間のなかの文学』(前田愛著 ちくま学芸文庫)の「空間のテキスト テキストの空間」より、東京という都市の一面をメモしました。
<このように電話帳という「書物」は、現実の都市空間と一対一の写像-逆写像の関係をもっているが、このモデルはビュトールの文章には出てこないタウン情報誌にもあてはまるだろう。 たとえば、「ぴあ」につめこまれている都市の情報は、「映画」「演劇」「音楽」「ニューディスク」「FM」「美術」「イベント」「講座」「新刊」というように、九つの項目に分類されている。目次のすぐ下にあるルート・マップは、国鉄・私鉄・地下鉄の各駅が一目で判る概念図で、地域別に切り分けられた情報の索引ともなる案内図も駅中心に構成されている。 これはクルマで移動する人びとに見えてくる都市ではなく、電車を利用し、歩行をたのしむ若い世代に見えてくる都市である。つまり、一方には駅を中心に気に入った映画、演劇、イベントを求めて都市空間を探索する歩行者のイメージがあり、他方には密室にこもってFMやステレオの音楽に耳をかたむける孤独な若者のイメージがある。 盛り場と個室の両極を生きている「ぴあ」の読者は、電話帳がそうであるように小さな活字がギッシリと組み込まれている表(タブロー)としての書物を媒介に自分自身の「都市」をつくりだす。 電話帳の効用について語ったビュトールの語り口をかりるならば、かれらにとって東京という都市は、タウン情報誌を内包することで、はじめて都市たりうるのである。しかし、この「都市」は、いうまでもなく現実の東京そのものではない。日常的な都市-ビジネス街や住宅地についての情報は空集合になっているからである。 「ぴあ」や「シティロード」からたちあがってくる「都市」は、みるときくに集約される欲望の記号の束がカタログ的に編成されている都市なのだ。>p023-024 ※この文章を掲載しましたが、読みづらいので、改行しました。多少は読みやすくなったのではないでしょうか。
by h_osd
| 2005-05-16 07:48
| 文庫・新書
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