昨日は師走の嵐が通過し、東京は夏日と突風で、すさまじい一日でした。そんな日に、向井敏さんの『残る本 残る人』(新潮社)を読みました。
この本は最近の十年間、主として「週刊朝日」と「毎日新聞」での書評のうち、文芸関係から三分の一選んで編集したそうです。それ以外も含め、この三倍あるとはすごい量の書評を書いたということになります。
内容もⅠ本の年輪、Ⅱ傑作の秘密、Ⅲ才能のカーニヴァルとの3つに分かれ、数多くの文芸本の書評が並びます。
向井さんもいまの尊敬する書評家の一人です。読書の守備範囲が広く、軽いフットワークでの、球さばきは抜群です。一人の作家をよく読みこんでいるからこそ、軽快で自在な書評が書けるといえるでしょう。
ご承知の通り、向井さんは開高健さん、谷沢永一さんとの親交もあり、この二人から大きな影響を受けています。特に谷沢さんに関しては、同書で取り上げ、「谷沢永一の書誌学的思考」という文章を書いています。
「Ⅰ本の年輪」の内容だけ見ても、ちょっと読みたくなる項目が列挙されています。
飯田龍太の句歴
丸谷才一の文学史構想
谷沢永一の書誌学的思考
小西甚一の俳諧研究史
反町茂雄の古書哲学
中村幸彦の古典学
宮崎史学の七十年
司馬遼太郎の講演術
篠沢秀夫の文学講義
こう並びますと、どうでしょう。いくつか、食指が動きませんか。