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2004年 12月 05日
〔255〕快著!瀬戸川猛資の『夢想の研究』(紀田順一郎) で、この内容については触れましたが、その本よりひとつ追記。
瀬戸川さんは岩波文庫にはかなわないといいつつ、 <私の好みでは、今いちばんおもしろい文庫は中公文庫だ。ノンフィクション部門の企画力が群を抜いていて、政治家・喜多壮一郎が「陳奮館 [ちんぷんかん] 主人」という変名で著した江戸文化論『江戸の芸者』(日本的ディレッタンティズムの典型)だとか、橘端超の『中亜探検』(明治時代の僧侶のシルクロード探検記)だとか、三浦清宏の『イギリスの霧の中へ』(オカルティズムによる自己省察の記録、という異色本)だとか、いったいどこから探してくるんだろうと感心してしまう隠れた名著が次から次へと登場する。刹那的なおもしろ本が猖獗 [しょうけつ] を極めている現在の文庫界では、これたの本がケタ違いに読みごたえがあり、輝いて見えるのである。>p83[ ]内はルビ。 と書いています。手元にある中公文庫のなかに、この三冊(絶版か)はありませんが、中公文庫の面白さには同感です。 例えば、最近手に入れた『ロシア的人間』(井筒俊彦著 中公文庫)。井筒俊彦さんは東洋思想、言語哲学、特にイスラーム関係が専門ですが、こういう本も書いています。 <・・・・・・学生時代以来、十九世紀ロシア文学は私の情熱だった。ロシア文学との出会いは私を異常な精神的体験とヴィジョンの世界の中に曳きこんだ。本書は、そのような世界の興奮の奔流の中に巻きこまれてゆく感激を、自分自身のなまの言葉で、そのままじかにぶちまけてたものだ。この意味で、これは私の『学問以前』であり、もう二度と書けない作品である。>p317 かつての中公文庫はそれだけ余裕があったのか。いまはご承知の通り、厳しい現状。売れる文庫を優先せざるを得ない状況で、そこまで「読みごたえ」ある文庫を出せないのか。 それでもまだおもしろい文庫ラインナップ。かつての輝きを求めすぎるのはどうかと思いつつ、「刹那的なおもしろ本が猖獗(しょうけつ)を極めている現在の文庫界で」頑張ってもらいたい。 〔追記〕 12月4日の「本棚控帖」を読んでいましたら、ちくま文庫がおもしろそうです。来年1月の新刊案内が各社のHPに掲載され始めています。要チェックですね。
by h_osd
| 2004-12-05 16:35
| 文庫・新書
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